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内部障害とは?神奈川後保護施設は内部障害者更生施設としてスタートしました

内部障害者と施設の歴史

川崎満治
 湘南アフタケア協会は、昭和25年2月にその当時「国民病」とまでいわれていた「肺結核」に罹患された方の結核回復後の社会復帰を目的と施設として創立された。戦後GHQの指導のもと日本の福祉は生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法(いわゆる福祉三法)が整備されたが、呼吸器機能障害については、まだ障害として認定されず、当施設創立当初の法律上の施設の種別としては、生活保護法における「結核後保護施設(けっかくあとほごしせつ)」として位置づけられていたようである。
 当時、「肺結核」に罹患した人は、長期の療養を余儀なくされ、また多くが、その当時の「肺結核」に対する無理解が、家族あるいは社会や地域から隔離、隔絶される結果となった。家族や社会との接点を失い、経済活動に参加する機会をも失われることになった。したがって、そうした人たちの長期療護後の社会復帰施設として生活保護法により認可されたのも必然だったのかも知れない。
 その後、日本の社会は高度成長期に入り、地方の労働力(者)を都市部に集中させた。関西では「あいりん地区」、東京では「山谷」、そして横浜では「寿町」がそうした労働力(者)の拠点となった。そうした中、荷重な労働に対し生活状態は決して良好とはいえない環境の中で、一部の人は健康状態を悪化させ肺結核あるいはその他の疾患を抱えることになっていった。そして、慢性的な疾病を抱え入退院を繰り返すようになり次第に労働力から排他されていったのが、その当時の「結核後保護施設」の入所者であった。
 そのような時代の中で、当法人の創立者等が当時の厚生省に日参し、呼吸器や心臓に慢性的な疾患を抱え医療的依存度が高くなった人たちを「呼吸器機能障害」「心臓機能障害」の「内部障害者」として身体障害者福祉法で認めさせ、それまでの「結核後保護施設」も身体障害者福祉法における「内部障害者更生施設」として昭和42年に認可された。その後、内部障害は、呼吸器機能障害、心臓機能障害のほか腎臓や大腸、小腸、ぼうこうなどの内臓にかかる慢性的な疾患に対しても「障害」を認め現在に至っている。
 一方、高度経済成長期から低成長期へ日本経済は移行していく中で、都市部に集中した労働者は、仕事だけでなく帰省先をも失われていった。さらには高齢化も伴い、生活環境も悪化していく中で、慢性的な疾患を抱えるといった社会的悪循環の構造に陥った結果「内部障害者」となり施設を利用せざるを得ない状況へとなっていった。内部障害者の人たちが皆こうした経歴ではないことは言うまでもないが、当法人施設を利用している方の多くは、概ねこうした人たちであることは間違いないし、逆に施設を利用する多くの内部障害者は同様の経歴であると言っても過言ではない。また、多くの(と言っても数施設しか存在しなくなったが)内部障害者の施設が都市部に集中していたのもこうした理由であろう。

現在の内部障害者の状況

施設の外観
 戦後、医療の格段の進歩により肺結核の患者は激減した。しかし、代わって肺気腫やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの疾患が増え、慢性呼吸不全の患者に対しては在宅酸素が導入されるようになった。また、心臓疾患により心機能が低下すると心臓ペースメーカーが埋設され、糖尿病などにより腎臓機能が低下すると人工透析が導入となり、また、疾病により大腸や膀胱などの機能が低下すればストーマが設置される。こうした医療の進歩は同時に多くの「内部障害者」を生む結果になった。
 厚生労働省の統計を見ても身体障害者の中で、肢体不自由者の次に多いのが内部障害者であり、しかも、肢体不自由者を含む他の身体障害者の数は比較的横ばい状態であるが、内部障害者については年々増加傾向にあるという。内部障害者については、前述のような在宅酸素や心臓ペースメーカー、人工透析、ストーマなど医療的な依存度が高く、食生活も含めた日常の生活管理が不可欠であるが、大半の内部障害者が普段の生活の中で自己管理しながら、また家族などの支援も受けながら自立した生活を過ごしている。
 しかし、中にはそうした自己管理能力に欠け、また援助する家族も不在で入退院を繰り返す内部障害者もいる。かつて、障害者自立支援法が施行される前の内部障害者更生施設は、そうした内部障害者の健康管理を行う中でその人らしい生活を支援することを目的としていた。この度の自立支援法による障害程度区分の導入により、ADLでは比較的自立度の高い内部障害者は、施設サービスの対象外となってしまい、制度の狭間の中で地域の中に埋没しているのではないか懸念されるところだ。
 また、内部障害は目に見えない障害とも言われ、心肺機能など内臓の疾患による体力の低下、持久力の低下や日々の体調の変動が、単なる「怠け者」のように評価されてしまいがちであるだけでなく、内部障害者は体調の悪化が重篤な結果になりやすく、特に心臓機能障害者などは「突然死」など生命に対するリスクを抱えていることも理解しなければならない。

内部障害者への施設サービスは

 内部障害者の抱える医療への依存と、身体的ハンディキャップ(慢性的な内臓疾患により日常生活に対する制限)、社会的ハンディキャップ(経済活動や家族、地域社会からの疎外)、心理的ハンディキャップ(健康への不安、死に対する恐怖など)への支援を目的にしている。
 医療への依存に対しては、定期的な通院や急変時の対応など医療機関との連携は欠かせない。最近は重複障害や高齢化も進み、通院の付添支援も増えてきた。また、身体的、社会的なハンディキャップに対しては、施設機能として「衣」「食」「住」を確保し、日中活動での作業を通じ社会的活動の場を提供している。心理的なハンディキャップに対しては、看護師や管理栄養士、生活支援員、臨床心理士などの連携により、普段の健康管理や健康不安などに対し利用者が安心できる生活環境づくりを行っている。
こうした、生活場面における「守られている」という安心感を施設利用者に持って頂くことが施設サービスの一番の目的であることは間違いない。

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